永久磁石で浮上?

作成日:2004/xx/xx 更新日:2004/xx/xx
永久磁石で浮上?

永久磁石でパチンコ玉が浮上したという下記の記事をみて、再現しようと試みました。
・高校生が定理覆す大発見? 永久磁石で鉄球が浮上(共同通信)
・世界初 永久磁石使い鉄球を安定浮上(岩手日報)

永久磁石で浮上 再現実験
実験に使った物
  • フェライト磁石
    リング型 直径30mmと45mm
  • ネオジム(ネオジウム)磁石
    丸型   直径22mm、厚さ10mm、表面磁束密度450mT
    リング型 直径26mm、穴の直径20mm、厚さ6mm、表面磁束密度350mT
  • 鉄球
    直径3mmのベアリングと、直径6mmの鉄球
  • ケース(板)
    CDケース
磁石などの入手先は、こちらをクリックしてください。
不思議な物ショップ
再現できず
磁石と鉄球の様々な組み合わせを試してみましたが、再現できません。
記事では、どのような磁石を使ったのか。ケースの様子、特に横から見た様子がわかりません。情報不足です。どこかのウェブニュースで、動画が配信されたらしいのですが、残念ながら、期限切れなのか見れませんでした。
発見? 永久磁石で浮上?
永久磁石で浮上?

永久磁石で浮上?

現象の再現はできませんでしたが、興味深い現象を発見しました。

永久磁石の下で、鉄の玉が、くっつくことも離れることもなく、浮いています。ただし、背後に透明な板があり、横方向の動きを制限しているので、完全に浮いているわけではありません。写真は、まるで、宙に浮いているように見えますが、透明な板があります。同じものを横から撮影したものがその下の写真です。


永久磁石で浮上?(横)

永久磁石で浮上?(横)


どうしたら浮くか
写真を見れば、一目瞭然ですが、2個の円形磁石を隙間を空けてくっつけて、その下に鉄の玉を置くだけです。写真の磁石の隙間には、プラスチック製の板を挟んでいますが、紙(本)でも、かまいません。2個の磁石の間隔は、鉄の玉の直径と同じくらいが適当ですが、調整してみてください。上の写真では、次の磁石と鉄の玉を使っています。
ネオジム(ネオジウム)磁石 丸型 直径22mm、厚さ10mm、表面磁束密度450mT
鉄の玉 直径6mm
ネオジム(ネオジウム)磁石は入手が難しいので、フェライト磁石を代用しても同じ現象を再現できます。しかし、力が弱いので、小さな鉄の玉しか、浮かびません。
うまくいかないようなら、左の写真を左回りに90度回転させた状態で、鉄の玉の様子を見てください。まず、板を横に置き、その上に鉄の玉を置きます。磁石を上下(写真の状態なら左右)に動かすと、鉄の玉が磁石から離れる位置が見つかると思います。その状態から、徐々に板を傾けて垂直に近づけていきます。2つの磁石の隙間を調整して、もっとも良い間隔を見つけてください。
原理
仮説ですが、2つの磁石の隙間からの磁束と、外側からの磁束の影響により、この現象が起きると考えられます。隙間からの磁束と、外側からの磁束は極性が逆のため、隙間(つまり、磁石)に近づくほど、打ち消しあって、磁力が弱まります。また、磁石から離れるほど、磁力が弱まりますから、もっとも、磁力が強くなる位置に鉄の玉が留まると考えられます。(正確には、もう少し複雑な表現が必要だと思いますが、省略)
原理

原理


完全に浮かすには
板を反磁性材料にすると、完全に非接触で浮かせることができるかもしれません。私は反磁性材料が入手できませんので、どなたか実験してみませんか。反磁性材料をプレゼントしてもらえるなら、私が実験します。
アーンショウの定理
元の記事によれば、アーンショウの定理を破ると、今回の現象が起きるそうなので、アーンショウの定理を調べてみました。
アーンショウの定理をインターネットで検索すると、
「電荷の存在しない領域でポテンシャルは極大値も極小値もとらない」
とありました。今回の実験の対象は磁力なので、分野が異なる気もしますが、言っている事は磁力でも成り立つでしょう。
今回の実験に合わせて、限定的に解釈すると、次のようなことだと思います。
アーンショウの定理

アーンショウの定理


上の左のグラフで示すように、距離が離れるほど力が弱くなりますが、その変化は、減り続けるだけで、途中で増加することはありません。右のグラフのような形にはならないのです。
これを磁石と鉄の玉に当てはめてみると、次のようになります。
力の分布

力の分布


左の図では、力の向きを矢印の向きに、力の強さを矢印の数で表現しています。磁石に近いほど、上向きの力が強くなります。これを右のグラフのように表現してみます。上向きの力を90度回転し、右方向にとっています。
宙に浮くには
鉄の玉が宙に浮くためには、重力と磁力のバランスがとれなければなりません。上のグラフに重力と、重力と磁力の合力を加えたものが下のグラフです。緑が重力、青が磁力、黒が合力を表しています。
力の合成

力の合成


グラフには、重力と磁力の合力が0。つまり、釣り合って、宙に浮く場所が存在します。では、その場所で実際に浮くのかといえば、かなり難しいでしょう。なぜなら、釣り合う点から、わずかでも上の場所では、上向きの力が働き、磁石にくっついてしまいます。逆に、わずかでも下の場所では、下向きの力が働き、落ちてしまうからです。玉のりをするくらい難しいのです。
釣り合う点

釣り合う点


仮に、上のグラフのように、釣り合う点から上に行けば下向きの力が働き、下に行けば上向きの力が働くような形にできれば、安定して宙に浮くことができます。「アーンショウの定理」が崩れ、右のグラフのような形になれば、同様に、鉄の玉を宙に浮かせることができるのです。
磁石を横に置いたら
磁石を板の横に置けば、鉄の玉がくっつき宙に浮いて見えるのは、誰でも知っていると思います。その場合の力の分布を考えてみます。
磁石を横に置いたら

磁石を横に置いたら


上の図は、紫の板に鉄の玉がくっついている様子を表しています。磁力の水平成分は板の反力で打ち消されますので、垂直方向のみを考えます。磁力は、上の位置では下向きであり、下の位置では上向きです。
これに重力を考慮に入れ、合力を求めたのが右のグラフです。磁石の中心位置より、少し下がった場所で、釣り合っています。
磁石をどう置くか
垂直な板に鉄の玉をくっつけて浮かせる磁力の分布が分かりました。では、磁石を横ではなく、上に置いて、同じような磁力の分布にするには、どうすればよいかと考えてみます。
永久磁石で浮上?の写真を横から表したのが下の図です。おそらく、磁力は図に近い形になっていると思われます。ただし、鉄の球が引っ張られる間隔から考えると、もっと、複雑な波形になっているような気もします。
磁力による力

磁力による力


アーンショウの定理は崩れるか
この実験のきっかけになった佐々木修一教諭らの研究グループの実験が、アーンショウの定理を覆すものであるかはわかりません。しかし、私の実験は、アーンショウの定理を覆すものではないと思います。
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